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王国物語


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  004



「ッッっしゃァ!!」

思わず鬨の声が漏れた。
やっと、やっと手に入れた・・・・。 苦節二週間余り、長かった・・・。
「小烏丸造(こがらすまるづくり)」の杖刀・・・。

――この喜びは、俺がわざわざ刀を逆手に装備していることに起因する。
そもそも「杖刀」というモノは、名前のとおり鞘は「魔杖」として機能し、刀はそのまま刀として使えるという赤魔道師には相当、便利といえば便利な代物だ。 だがやはり両方使えるということは両方とも中途半端ということ。どちらも本物の魔杖、刀には威力が劣る。
しかも入手し辛いは高いはなので赤魔道師をやっている人でも、戦闘中適宜装備しなおしている人の方が多い。
しかし、「杖刀」のカッコ良さに惚れた当時の自分は考えた。杖刀の欠点はどうしても一撃一撃が軽くなってしまうところにある。 だったらどうにかして手数を増やせばいいではないか、と。
そこで試行錯誤の末、武器を「逆手に装備する」というのを発見し、そこで多少の攻撃力は犠牲になるが素早さは結構上がることを発見した。
それで右手に逆手で刀、左手に順手に杖を持つという珍妙な赤魔道師が完成したという訳だ。
まだ最初の頃は本当に良かった。初心者用のエリアで、近接の攻撃ををひょいひょいとかわしていく敵やら魔法を撃つと手痛い反撃をしてくる敵に苦戦している人達を横目に魔法と剣を駆使してサクサク進んでいった。
正直、赤魔道師なんて因果な職業を選んでしまったせいで後半苦労するのは目に見えていたし覚悟もしていた。

しかしこんなにも早く「逆手」が仇になるとは思っていなかった。
当然といえば当然だが、杖刀は「刀」だ。なのでやはり、当然片刃。
で、そもそも「逆手」というスキルの形式はそこまでメジャーではない。そのため、なんとスキルの区分が「長さ」でしか決められていなかったのだ。
具体的に言うと、ある刀剣用スキルがあるとして「順手」に武器を装備している人と「逆手」に装備している人とで、その技名と威力、発数は同じでもいい。が、当然その技の動き(モーション)は変えなければならなくなる。ここで運営側も正直マイナーな「逆手」スキルにそこまで時間をかける気はなかったのだろう、その剣の形状を無視して「短剣」「片手剣」「両手剣」などの長さによってきめてしまったのだ。 なのでそうと気づいたころには、俺は何と片刃の杖刀を装備していながら、両刃の「片手剣」扱いのスキルをとらざるを得なくなっていた。
当時まだ碌なスキルも覚えていないころは良かったが、レベルも所謂中級程度に上がり、スキルを使っての戦闘が当然になってくると、当然連撃の最中で刀の裏、峰の部分を使うことも多くなる。スキルはこれを両刃だと認識している為なのだが、実際はそれこそ峰打ち状態になっているので、ダメージは格段に下がってしまう。
これでは本当に役に立たないどころか、赤魔道師の中ですら残念なキャラになってしまう、と相当焦った。
だがいろいろ聞いてみると、自分と同じような境遇の方は結構いたようで、なんでも鋒両刃造(きっさきもろはづくり)、通称「小烏丸造(こがらすまるづくり)」という形状の杖刀を使えばよいということだった。
その頃本当に洒落にならなくなってきていたので自分に課していた戒めを解き、見ないと誓った攻略サイトを開いて、その形状の刀の入手方法を調べたところ、

「高い・・・。」

あっさりと撃沈。そもそも運営側がなぜこの形状を入れたかというと、そもそもこのゲーム、大体の敵に弱点が設定されていて、そこをピイポイントで突くことによって大ダメージが与えられる、という設定になっている。なのでその弱点を見破る狩人スキルにレイピア、という組み合わせの人が上位をほぼ独占してしまったのだ。
これじゃいかんということで、鋒を両刃にすることで突き技の威力が上がる、というボーナスを刀に実装することになったらしい。
運営事情には興味がないので疎かったが、どうやら他の武器でも刺突スキル強化や、弱点を見抜くスキルの実装などが起こっていたそうだ。

勿論そんな特典付きの刀は少なくとも中級の中でも結構上の方に行かないと手に入らない。
そしてただの「刀」でさえ入手し辛いうえに、こっちは「杖刀」が欲しいてきている。
試しにその形状の杖刀の中で、最も手に入りやすいのを調べてみると、最低でも今よりは二ランク程度上の狩り場で一週間狩り続けてどうか・・・というレベルだった。素材を集めてスミスに作ってもらうのは言うまでもない だったら特殊クエストなどの報酬で、と藁にもすがる思いで見てみたが、当然高レベル大人数前提のハイレベルなもののみ。中級程度の「半端者」が入るような余地はない。
ここで手に入ったその杖刀も、どこぞのお金持ちプレイヤーに回っておしまいだろう。

―――などと思っていた矢先にこの救済クエスト「―原罪―」である。
出た当初は名前や条件のインパクトから絶対グランドストーリーに関係している、と噂され、何人もの上位の人が挑み、そして死んで戻ってきた。
そうなるとかなりの高難度クエストか、と囁かれたがその実はカンタン、絶対的に不人気である赤魔道師の救済クエだったのだ。

なので前にも言った通り魔法、剣ともにある程度修めてないとほぼ不可能であったため、レイピアで弱点を強引に刺してきたやつらは赤魔道師を待つしかなくなった。
で、やはり赤魔道師の中でも最初は名乗りを上げるものが少なかったが、帰還者第一号が出てきた後にはそのドロップ品の旨さから、ほとんどの赤魔道師が行くようになった。
当然一号帰還の後、鬼のようなフラグ洗い出しが行われたが、箸にも棒にもかからなかったことをここに記しておく。



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